ワクチンの種類

ワクチンを打ったのにインフルエンザになった理由は、以下のような原因が考えられます。

  1. ワクチンと流行したウイルスの抗原性が一致していたにも関わらず体調や環境によっては感染することはあります。(ただ、重症化を避けられる確率が高くなるため、ワクチンを打つ意義は十分にありますよ。)
  2. 上記に準じますが、対ヒトには予防対策を十分に注意していたが、動物から感染してしまった。
  3. ワクチンの抗原性がはずれてしまった。
  4. ウイルスが突然変異した。

この中の3と4に関して、「国立感染症研究所」からのレポートに詳しくありますので、その内容を少しわかりやすく説明します。

参照:国立感染症研究所『インフルエンザワクチンについて』 

全粒子ワクチン

まずワクチンには種類があり、ポリオワクチン・麻疹ワクチンはウイルス粒子そのものを不活性化した全粒子ワクチンです。
ワクチン接種後にできた免疫は長期間感染が防げます。
例えて言うなら、果物を絞っただけの100%生ジュースのまま不活性化したもの、といったところでしょうか。

HAワクチン

一方、インフルエンザワクチンはウイルス粒子そのものではなく、ワクチン製造用にインフルエンザウイルスを培養し増殖させ、精製・濃縮をしたウイルスを分解し不活性化したものです。
こちらも例えて言うと、果物を搾って出たジュースを濃縮還元し、さらに分解して不活性化したもの。。。逆にわかりにくい?^^;

不活性化する対象に大きな違いがあるので、区別のためにポリオワクチンや麻疹ワクチンを全粒子ワクチン、インフルエンザワクチンをHAワクチンと呼んでいます。

さらに詳しくいうと、HAワクチンのHAというのはインフルエンザウイルスの表面にある赤血球凝集素という糖タンパクのことで、このHAを不活性化する、つまり免疫をつけるのがインフルエンザワクチンです。
しかし残念ながらこのHA遺伝子は突然変異が煩雑に起こり、変異後は過去に打ったワクチンでは対応できません。
変異ウイルスは次々と出て流行していくので、インフルエンザワクチンは一回の接種で長期間免疫が続くということにはならないのです。

じゃあ、意味ないの?と言いたくなりますが、もちろん接種する意味はあります!
確かに抗原性が大きくはずれたウイルスから作られたワクチンであれば効果はゼロですが、WHOを中心に地球レベルでウイルスを監視し、流行するであろう抗原を予測し、それに対してのワクチンを毎シーズン選定しています。
結果、『抗原性が大きくずれているためにワクチンが効かない』ということはほとんど起こっていないのですよ。

それでもインフルエンザは、ヒトだけでなくトリやブタなども自然宿主とする感染症なので、ポリオのようにヒトにだけ接種すれば万全とはいえず、完全防御というわけにはいかないのですね。

ワクチンの有効率って?

ときどき聞かれる「有効率75%」の言葉に対する誤解もあります。
ワクチンを接種すれば、100人のうち75人が発症しないで済むと考えるのは間違いで(そう思いたいですが)、ワクチンを接種せずに発症した人の75%は接種を受けていれば発症せずに済んだのに・・・という意味です。
つまり感染する状況にあった人は感染する。
感染した人の中でワクチンを打っていない人の75%は予防接種していればインフルエンザにならなかったということです。
ワクチンを打っていた人と、ワクチン有効率は直接関係ありません。

ここまで書くと、あまり効かないんじゃないのと思われそうですが、研究の結果、重症化を防ぐというデータは出ていますし、体の弱まった高齢者や感染経験の少ない子どもは感染し発症する可能性が高いため、接種を勧められています。