A型B型C型を識別する重要性

現在のインフルエンザ迅速診断キットでは、A型・B型の判定までできてしまいます。
※C型は風邪程度と診断されることがほとんどのため、検査をするに至りません。

しかし、果たして型を識別する必要性はあるのでしょうか?

現在、病院で処方される抗インフルエンザ薬には、タミフルやリレンザ、イナビル、ラピアクタといったものがありますが、そのどれもがA型はもちろんB型にも効果があります。
しかし、これらの治療薬が登場する以前の1998年頃には、アマンタジン(商品名:シンメトレル)というパーキンソン症候群の治療薬がインフルエンザにも効果があるということで使われていました。
ところがこのアマンタジンは、B型には効果がなく、A型にのみ効果を発揮する治療薬であったのです。
そのため、その頃のインフルエンザ検査では、A型かB型かを識別することは非常に重要でした。

現在は両方の型に効果がある抗インフルエンザ薬が開発されたため、その必要性は以前よりも薄らいだのかもしれませんね。

A型の亜型を識別する重要性はあるの?

A型には「亜型」というものが存在します。
同じA型でもウイルスの表面構造の違いから、色々な種類に分類されるのですが、この種類のことを亜型というんですね。
では、果たしてこの亜型を識別することは重要なのでしょうか?

インフルエンザウイルスは、その表面構造(タンパク)が頻繁に変化することが分かっています。
時としてこの変化が大きくなった場合に感染性が増大、大流行となるため問題視されているのです。
いわゆる「高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)」と言われるものなどがそれにあたります。
そのためにも亜型を識別することは重要であると言えるのかもしれませんね。

ただ、現在の迅速診断キットでは、予測不可能なタンパクの変化を識別することはできません。
的を絞って一時的に識別させることはできるかもしれませんが、翌期は使えないという事になります。

2009年のパンデミック以降、今のところ予測されたワクチンで大流行は防げています。
という面からみると、「迅速診断キットで亜型を識別する必要性」は薄いのかもしれません。

現状 亜型の識別は、一般の病院では行わない検査法で行われています。
毎年インフルエンザが流行る以前に調査が行われ、そこで『A型ならこの亜型に的を絞ったワクチンを作ろう』と判断されます。

インフルエンザの歴史から見る限り、100年に3回やってきたパンデミック。
2009年のパンデミックから、例えば30年後として2040年ごろにインフルエンザウイルスの大変異が起こるとして、既に数十秒~1分で型の診断ができてしまう迅速診断キットが開発されつつあるこの2017年、あと10年もすれば亜型も識別できる迅速診断キットが開発されているかもしれませんね?!