富士ドライケム「IMMUNO AG1」
発症後2-3時間、最短3.5分で判定?!
はじめに…
写真フィルムでおなじみの富士フィルム社から発売されている「富士ドライケム IMMUNO(イムノ) AG1」という検査法をご紹介しましょう。
なにやら、幅180㎜、奥行き200㎜ほどの卓上型装置と検査キットを使用するのだとか…
この方法は、従来の迅速キットの測定原理に加え、「銀イオン」を使用することにより、インフルエンザウイルスを100倍の大きさにすることで見え易くし、従来の迅速キットよりも検出感度を約10%も向上させることができたという検査法です。
さすがフィルムメーカー!
フィルム現像の技術を応用し銀イオンを使うとは!
検体の採取方法は従来の通り、綿棒で鼻腔をぬぐうことによって採取できる鼻腔拭い液です。
(これが痛いのは変わらないのですが・・・)
検体にウイルス量が多く存在し、10分以内に陽性と判定できた場合には銀イオンを使うことなく検査が終了します。
ここまでは従来の検査法と同じですが、ここからが違います。
ウイルス量が少なく、10分以内に陽性反応が出なかった場合、なんと自動的に「高感度モード」に切り替わるのです!
そして、インフルエンザウイルスに大量の銀イオンを付着させ
数十秒後・・・
インフルエンザウイルスが100倍まで膨れ上がり・・・
従来の迅速診断キットでは検出が難しかった、発症から12時間以内でも検出が可能となったのでした!!
100倍まで大きくなったおかげで少量でも見つけやすくなり、また、最速では発症後2~3時間でも検出できる可能性が高まったというのです!!
さらなるメリットは、迅速診断キットと違い判定もすべて装置が行うため、測定者による判定の誤差の心配もなくなったのです。
まさに革新的な検査法ですね!
- インフルエンザウイルスが微量な場合でも検出しやすい
- おかしいな、と感じてから2~3時間後に通院すれば検査結果が出る
- 10分以内に判定できる。時間管理が不要。
- 測定者による判定誤差がない
僕たちの身近な病院でも、今後ますます導入が増えてくれることを期待したいですね。
SGNPを用いたインフルエンザの超高感度検出法
なんと潜伏期間中のウイルスも見つけ出す?!
次は、スディックスバイオテック社が開発した、SGNP(糖鎖固定化金ナノ粒子)???といわれる、なにやら難しい物質を使った検査法です。
まず、検体の採取方法は唾液でも良いという事が大きな特徴の一つです。
もちろん鼻腔拭い液でも精度はほぼ変わらないようです。
インフルエンザウイルスは人の細胞に感染する前に、まず細胞表面に着いた「糖鎖」といわれる分子に吸着する性質があるのだそうです。
この性質を利用し、この会社ではウイルスが吸着する「糖鎖」を人工的に造りだし、更にとっても大きな「金のナノ粒子」というものをくっつけた「SGNP」という物質を作り出しました。
インフルエンザウイルスが存在した場合、この大きなSGNPにくっつけてある糖鎖がウイルス表面に吸着することで、重みを増したウイルスは下の方に沈んで行ってしまうのだとか。
この沈んでいったウイルスだけを集めることで、超微量なインフルエンザウイルスしか存在しない場合でも検出することができる、というのがこの方法の特徴です。
しかしこの方法がすごいのはここからです。
なんと、インフルエンザに感染してから症状が出るまでの「無症状、および潜伏期間中(インフルエンザの場合1~3日間)」の方をも見つけ出すことができてしまうのです!!
これによりどういう効果が期待できるかと言いますと、
無症状患者からのウイルスの拡散を防ぐことができる、
発症する前に抗インフルエンザ薬の治療を開始できてしまう、なのです!!
つまり…
体調がおかしいとは思わないけど、家族がバタバタと感染していくから自分も心配なので、検査を受けたい人
体調がおかしい!多分インフルエンザに感染した。でもあのつらいインフルエンザの症状がでないうちに治したい!!
⇒乳幼児や高齢者、持病を持つ方など、インフルエンザの症状に耐えられないかもしれない患者さん
⇒受験前の学生さん
などなど、
そう、そんな人たちのためには最高の検査法ですね。
鼻水をスマホで撮影すると1分で診断?!
まとめ
みなさん、最新のインフルエンザ検査についていかがでしたか?
どんどん進化をとげているインフルエンザ検査法。
現在の「迅速キット」の場合ですと、家族が罹ったからといって、本人に症状が全く出ていない段階での「インフルエンザ検査」は、保険請求上通らない可能性が大きく、たいてい自費で検査をすることになるでしょう。
なので、ここでご紹介したSGNP法に関しても、現時点では、全く症状が出ていない段階の方にこの検査を行っても、恐らく、同じように保険請求上通らない可能性が大きいと思われるので、「迅速キット」にとって代わる検査法になるかどうかは、今のところ僕にもわかりません。
また、タミフルなどの抗インフルエンザ薬に関しても、家族が罹ったから心配なので服用したい(いわゆる予防投与)といっても、保険を使った処方箋は現在のところ、出してもらえません。
今後、このSGNP法が普及してきて、『潜伏期間中にインフルエンザが発見できる』ことの社会的信用を得られれば、この方法を使ったインフルエンザ検査がかなり増えてくるでしょう。
そして、発症する前の潜伏期間中に検査を行っても保険適用となり、抗インフルエンザ薬の処方も保険適用になる日が来るのかもしれませんね。